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異形のものに心惹かれる。人はその弱さ故に鬼と変ずる。憎悪、瞋恚、悲嘆、慟哭、虚無、ありとあらゆる負の感情を正しく昇華させることに失敗した時、凝集した想いは、柔らかな額の皮膚を突き破り、角を生やし、牙を剝き,異形のものと成り果てる。その有様は悲しくも醜いが、正しく昇華させる力の弱い輩にとっては、水が低きに流れるがごとく、ある種、この歪んだエネルギーの発露に慰撫される場合もあるのだ。それは「善悪」とはまた別の尺度の世界観である。不健全であるとの断罪は甘んじて受けよう。だが最後の行き場、“生き場”くらいは残しておいてもらえるものならば、と切に願う。

「精神を病む」とは、「主観を病む」とは、人間と異形のボーダーを生きることに似ているかもしれない。少なくとも人外に親和性は高い。自ずと、太陽の躍動感より、月の静謐を選択する。否、月の光すらももはや眩しい。朔月の「闇」は「病み」である。「病み」は「闇」に通じ、「闇」は宇宙に遍在するブラックホールのメタファーである。底知れない暗黒の彼方から、妖かしの百鬼夜行の気配が迫る。

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