「カタルシス—おばあちゃんと作ったスカート」
布一枚買って、おばあちゃん家に「フレアースカートの作り方教えて」と行った。
8枚に型紙を分けて縫い合わせていくという、私にとっては高度な技術だった。
おばあちゃんは「10年後はたまえちゃんも35歳だから、おばあちゃんがボケちゃっても大丈夫だね」と言ったから、「うん、大丈夫かもね」と応えた。
それから10年後おばあちゃんに「スカートの作り方覚えてる?こうして、ああして、こうだったよね。簡単でしょ?」と言われたから、「うん」と応えた。
実際には全然覚えていなかったのだが…。
翌年、祖父があの世へ旅立ち、おばあちゃんはますますボケてしまった。
衣替えする時、大切にしまってあるフレアースカートを見ると思い出す。
梅畑の縁側で、二人で生地を裁断していた記憶。こういう物を“たからもの”と言うんだね。