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『Pink²(の事情)』について

この絵は確かに、前回(第4回「心のアート展」)に出した同じ作品ですが、ご覧の通り、まったく同じ作品ではありません。まず最初に鉛筆で下描きをして、その上から油絵具で塗っていきます。これで完成かな?と思って見ていると、くるいや、違和感をおぼえ、直しては見て、直してはまた見て、大まかな部分では合っているのですが、細かい部分が違って見えます。その部分の形や、位置、色の濃さ、雰囲気などを見たり、場合によっては0.何ミリの違いも見つけたりします。描き方は写実的ですが、実物とは色を変えて描いてます。人物画ですが、肌色も使ってません。まずは、陰になる部分を先に描きます。顔は黄緑に白を混ぜて塗り、乾いたら薄いピンクを塗り、また乾いたらビリジャンを薄くグレイジングをします。目の白目はそのまま白を塗り、上からビリジャンをグレイジングします。瞳はプルシャンブルーを2、3回グレイジングします。唇はオレンジを塗り、上唇は水色を濃いまま塗り、陰の濃い部分は赤でスフマートし、その上に濃いビリジャンを塗ります。下唇は水色に白を混ぜて薄い水色を塗ります。影の部分はビリジャンを薄く塗ります。髪の毛はハイライトになる部分から赤の上にビリジャン、その上に白を塗ります。その他の髪は頭の上の1本1本はエメラルドグリーンで描き、その下の頭にかぶさっている部分は、赤を塗り、その上から濃いビリジャンを塗ると、こういう黒っぽい緑になります。その下の額の1本1本の髪の毛は一度赤で描き、その上からトレースするように濃いビリジャンで描きます。そして服はシャツに紫を塗って、レモンイエローを塗ります。エプロンは赤を塗り、その上にエメラルドグリーンを塗り、陰は濃いビリジャンを塗りました。パーカーは陰の部分から、青紫、イエローオーカー、赤、ビリジャンを濃いめに塗りました。そうするとこの様に真っ黒になります。その他の光のあたってる部分はイエローオーカーまで同じ順序で塗り、陰との境目は赤でスフマートをして、その上からビリジャンでスフマートしました。向かって右側のパーカーの袖の下部はハイライト近くまでビリジャンでスフマートしました。チャックの部分は写真を見てかぞえました。向かって左側は72個、右側は39個でした。バックの赤も苦労しました。上側の左右は一発で決まりましたが下側は赤で薄目に何度もグレイジングしましたがうまく行かず、1回白で塗り直して、前より濃い目にグレイジングを重ねたらうまくいきました。そして出来たかな?と思って向かって右側の目の雰囲気が違うと思い、まず形が写真と違ったので直し、まだ変だなと思うと、左右の目の周り、鼻や、アゴの陰が濃すぎて変だなと思い、白や、濃いピンクスフマートとリンシードオイルを混ぜて、0.何ミリの違うアゴのラインや、いったん色を薄めてから、ビリジャンでグレイジングを2回位して、グレイジングの薄目の所は一発でうまくいてきました(向かって右側のアゴから頬のあたり)。そのアゴのあたりを薄くスフマートします。向かって左側の目のあたりも同じ様にやり、陰にグラデーションをつけました。向かって左側の小鼻も1ミリ位左側に増し、唇の濃い陰はビリジャンを薄く塗り、日のあたっている側の顔面の陰はピンクにホワイトを混ぜて薄くスフマートしてます。背中のあたりのパーカーはビリジャンと赤を混ぜて塗り、向かって右側のフチと袖は、白を薄くグレイジングしました。髪のハイライトは自然に見える様に両側(上下)をビリジャンでグレイジングしてます。パーカーの右袖のしわの位置も左右そろって変だったので少し下げました。向かって左側の襟も左側に出すぎているので直します。そして目を細めて見て、バランスを取りながら全体の陰の(ビリジャン)を濃くしたり薄くしたりしています。唇のしわを描き、ハイライトはかなり白っぽくスフマートしました。グラデーションもつけようとしてます。パーカーの右側の襟の陰は濃い目のビリジャンを塗り、シャツの右側の陰は少し薄目にビリジャンを塗り、首の陰はグラデーションをつけました。この絵は描き始めてから3年が経ち、4年目に突入しました。この様に切りが無いですが、出来るだけ納得のいくいい作品になる様に頑張って行きたいと思います。

 

「石澤孝幸『Pink²(の事情)』について」

この絵は2012年の1月初旬から描き始めた。もとになっている肖像写真を見ながら、週に3回、ほとんど休むことなくコツコツと描き続けている2013年4月の第4回「心のアート展」に出品したのだが、それ以後も描き続けている。「これで完成」と思っても、また新たな「発見」をしては、そこを修正し、描き深めていくことを永々と繰り返し続けている。

レオナルド・ダ・ビンチは『モナリザ』を生涯、手許に置き、加筆し続けたといわれているが、その姿と重なり合うような石澤の制作姿勢は、私たちに「完成」した絵だけがアートなのではなく、描く「プロセス」もまたアートであることを示しているように思う。一見、前回展とまったく同じ作品が出展されていると思われる方もいるかもしれないが、ここには物質的な絵具の積み重ねだけでなく、時間といった有形無形の重層、奥行きが、作品に深みを与えている。この「プロセス」、絵に向かう「姿勢」を紹介したく、この第5回展での出品作品とした。

〈「心のアート展」実行委員会〉

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