「メトリティオアルゴス —のろまだから迎え撃てる者—」
未来南極の針葉樹林。飛ばないオオコウモリ・アルゴスたちは下生えで木の実を食べ暮らす。
肉食ペンギンが襲い来る。アルゴスたちはがに股なので仲間を見捨て逃げる能力は無い。団結し、頭頂の矢状稜角(しじょうりょうづの)を向け、受け身で防御する。アルゴスたちは何かに似ていないだろうか?
単体での非力さが全体の屈強さとなる。遠い昔、この星の動物たちを“生き物”呼ばわりし、“命をいただ”いているつもりになって神経組織を踏み躙っていたヒト亜族の類人猿も、本来は直立二足歩行によって逃走能力を失い、仲間と共闘するために自己家畜化できた倫理的な動物であった。