これまでの展覧会

作者一覧 心のアート展

「モビールを作った頃のこと」

引っ越しをし、新しい土地になじめずに、苦しく辛い日々が続いていた。私の脳を取り出し、米国の実験研究用に売りさばく組織に狙われている、という幻聴にとりつかれ、ついに入院しなければならない事態になった。入院生活も耐え難いものだった。何かをしていなければ生きられない状態だった。偶然手に入れたビーズの手芸材料をベッドの上に広げ、カーテンに囲われた狭い空間にこもりっきり。朝、目覚めるとビーズ、粘土、針金を用いて、夜寝るまで一日中10時間以上もモビール部品を作り、カーテンレールに次々と吊り下げ、来る日も来る日も造り続けた。

勤務室のカメラ映像で見ていた主治医が、「オレが気が狂いそうだよ」と呆れ返り、それでも容認してくれた、と後で聞かされた。3ヶ月の入院期間の日々、私にこの作業が無かったら、耐えしのぐことは出来なかっただろう、と思う。症状が軽快し、退院した後は、全くやる気がなくなってしまった。この作品はいまの私にとって、遠い過去の遺物のように見える。

現在、東京足立病院のデイケア〈造形教室〉、老健の〈造形教室〉の創作の場で、お手伝いのような、これが私にとっての〈作品〉づくりのような日々を過ごしています。

TOPに戻る