私にとって、表現することは何か、と聞かれれば、ただ、自分が描きたいように描いているだけ、というしかありません。
はじめから、何をどう描くか、ということは決まっていません。毎週木金の2日〈造形教室〉に通い続けていますが、「絵を描きに行くんだ」という気がまえで行くんじゃない、とにかくそこに行けばアトリエの仲間たちがいて、自分の“指定席”があり、エンピツ、クレパス、パステル、水彩、油絵具さまざまな画材が備えてある。その日その時の気分で画材を選び、画面に向かいます。昼食をはさんで終日絵を描き、いつしかさまざまな作品ができあがっている、という感じ。描くことが、ただ楽しいだけではなく、ときに壁につきあたったり、迷いや苦労があったり、しかしそうしてでき上がって行く作品で、自分でも思いがけない発見や広がりを体験することが多くあります。
絵にはまったく興味がないどころか、むしろ不得手、嫌いでした。それが今日まで12年続いているのは、どうしたのか。自分の内には、自分でも知らないもうひとりの自分が在ったからじゃないでしょうか。絵が嫌い、という観念だけで決めてしまっているなら12年間も続かないと思う。何かがあるのだろう、それが今でもわからないのです。