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障害を持って画家として感じた事

私は2001年の左聴神経脳腫瘍の摘出手術後記憶が失われ、自分が絵を描いてきたことも覚えていませんでした。その後水頭症の手術を受け記憶を取り戻したものの体が不自由でそれまでのように大作を描ける状態ではありませんでした。その状態の中で家族の反対を押し切って150号の絵を制作しました。動機はそれまで30年近く出品してきた公募展に今年も出品するといういつもと変わりないものでしたがやってみると絵を描くということは思っている以上に大変な事でした。150号と言ってもその大きさにするために小さいパネル5枚を組み合わせ、あと2枚のパネルで隙間を埋めました。障害を持つ前は自分を証す為にどう絵を描くか考えていたところがありましたが、この時はいろいろ思うことなく絵を描くことだけに集中することができました。体のバランス感覚がない上、上を向くと頭の中がグワーンと回り、さらに激しい体の痛みを抱え、絵を描く最低の条件の中で初めて【自由に絵を描く】ことができました。それは自分で絵を描いてない感じでした。私は「自然に湧き上がる絵画・・・生の芸術(アールブリュット)」に若い頃から憧れていましたが、障害を持って初めてその「自然に湧き上がる絵画」を体験する事が出来ました。

その体験から、ずっと自分の中にあった生命に対する興味と畏敬が「生命の発生」という私の絵のテーマになりました。

2005年の夏のある日、亡くなった兄から聞いていた松の大木のことを思い出しスケッチに行きました。私はいつも用意周到な方なので、出先で思い付いてデパートの文房具売り場でスケッチブックと水彩絵の具を買って絵を描きに行くという事は私の人生の中で冒険と言えるものでした。そこで見たものは植物が光を受けている感動的な姿でした。そしてその場に生き続ける大木の存在に「生命」と、その植物を長い時をかけて育む人間と土地との繫がりを感じました。私の冒険は、心のあり方が見えるもの描くものを深く広くしていく事を気付かせるものとなりました。

絵を描く心は自分が思っている以上に人が生きることに根ざしているのではないかと思います。それを確信として今回、「心のアート展」に出品される方々と様々に共有できるのではないかと思い、わくわくしています。

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