これまでの展覧会

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『Lunatics ―月下に番(つが)う―』

平川病院のアトリエに通い出して3年が経ちました。地道にデッサンの練習を重ねた結果、ある程度描写力もついたと思ったので、今回は思い切って画面構成に挑戦してみました。

結局出来たのは、既成のイメージの断片を継ぎ接ぎしただけの凡庸な作品でしたが、私にとっては新しい方向性の第一歩です。蝶、月、花などのモチーフは、意味よりも装飾性を優先させてチョイスしました。見て華やかな絵が描きたかったので。

追求したのは「高貴」ではなく「通俗」です。「解り易さ」を目指しました。

ビジュアルというものは、須く、暗号化ではなく記号化であるべし、というのが最近の持論です。

 

『嶽本野ばら著「sleeping pill」より 宝ヶ池心中』

妄想を作品化することには、少しずつ慣れてきましたが、私の場合、自分の想像力には、やはり限界があります。そこで一計を案じ、小説の中の一節をビジュアル化してみたらどうだろう、と思いつきました。

これは、私の好きな嶽本作品の中の一場面で、池にボートで漕ぎ出し、睡眠薬自殺を図る男女を描いてみたものです。二人の間には“死”を巡って微妙な温度差があります。原作の心理描写はさらに複雑で、誘った男の方が現世に未練を残し、誘われた女の方が積極的に死にたがるという皮肉な展開になります。そうした情念のあやを、霧に覆われた森や、お女郎さんの赤い長襦袢で象徴的に表現してみたつもりです。

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