2009年に始まり、第4回以降は隔年で開催されている東京精神科病院協会(東精協)主催の「心のアート展」も、今回で6回目となる。そのため、定期開催はすっかり定着した感があり、作品応募数もこれまでで最多の460以上になった。レベルの高い常連の作者らによる作品群に加え、全体の質も上がってきた印象を持つが、展示会場のスペースには制限があるため、お披露目する作品を選別せねばならない。東精協事務局と平川病院における厳正な一次審査・二次審査を経て選ばれた作品が会場に展示されるわけだが、今回は同一作者による複数の作品応募というケースが結構多く、類似のイメージを持つ作品が多数の場合には、その絞り込みが難しかった。そして、このようにして選ばれた作品群も、その展示の仕方によってイメージは大きく変わるので、どのように配置・レイアウ卜するかが、とても大切である。安彦委員/審査員と宇野委員らが中心になってこの大変な作業を行なっているが、毎回、本当に頭の下がる思いだ。
さて、今回・第6回のテーマは『臨“生”芸術宣言!〜生に向き合うことから〜』で、多くの作品群とともに「関根正二」氏の〈特集展示〉も行なわれる。1899年に生まれ二十歳で亡くなった、日本の近代洋画史を代表する画家であるが、その展示コーナーにおける作品もしっかりご覧いただけると幸い。
ところで、今回のアート展では「吾妻ひでお」氏の特集展示も予定されていた。吾妻氏を知らない人にとっては「ある漫画家」程度かもしれないが、独特のストーリーが展開されることからマニアックなファンに根強い人気がある。対アルコールの闘病生活を描いた作品は賞もとっているが、ぜひ一読されることをお薦めする。今回、その吾妻作品をまとまって見られることを楽しみにしていたのだが、氏のご病気により、今回は残念ながら中止となった。またの機会を、是非期待したい。
ところで、毎回思うのだが、展示会場を訪れる人々は作品のどこを観て、何を感じるのだろう。芸術そのものを生業としている方もいれば、素人の方もおられるだろうし、感性や常識、物事をとらえる基準などは人によって、恐らく全て異なるだろうから。従って、ある人の評論や評価が他の人にも当てはまるとは限らないし、正反対の捉え方をする場合だってあるだろう。
それぞれの人がそれぞれの感性で受け止めればよいのだろうが、それでも多くの人に何かを感じさせる作品は、やはり芸術性が高いのかもしれない。
第6回「心のアート展」、じっくりとお楽しみいただきたい。