第1回展「生命からのこもれ日」はこころを病む人々のさまざまな営みを、絵画という有形の形で展示された作品も数多くあった。ここまでにいたったのは、このアート展に先行して長年の精神科病院の中での芸術活動の歴史があった。その活動は「精神科病院での芸術活動・37年の軌跡 ― 東京足立病院 ― 丘の上病院 ― 平川病院 ― 袋田病院『心の杖として鏡として―“癒し”としての自己表現」』としての小冊子(行人舎:2004年)に詳細に述べられている。精神科病院では治療を目的とした絵画療法は一般的にも行われているが、ここでは、これらの絵画療法とは異なり、本人の心の自己表現に寄り添う形で造形活動が行われてきた。これらは安彦講平先生による長年の経験からの適切なアドバイスが作者を支え、有形の作品となっている。つまり、作者本人と指導者の密接なコミュニケーションにより多様な作品が生まれたのである。
今回の心のアート展は、このような先行する芸術活動を引き継ぎ実施されているのである。ある作者に聞いてみると、この作品は「自分とある先生」によってできたといわれた。審査に当たり作者の病歴や心理的な経過を聞くことなしにひたすら作品から受ける感動に共感して審査が進められた。一部、時に先生の貴重なアドバイスにより作者と作品の理解がより深まった。
このような背景を理解していただき、第1回に引き続き「精神障害者に対する既存の価値観、制度的枠組みなどを超え、作者の人間としての自己表現を中心とした芸術活動を見るアート展」となることを願うものである。第2回展の審査では、第1回を上回る質の高い多様な作品が出揃ったように思う。審査員は身を乗り出して、作品の迫力に圧倒され、その多様な斬新な表現に驚き、時間が経つのを忘れて審査が行われた。
人間としての苦悩、不安、喜び、期待、楽しさ、および、癒し等など、見る人に共感と感動と驚きを与えてくれる作品が多くある。これらの感動はきっと多くの市民に共感を持って伝えられ、さらに、この中からアートの世界に新しい分野をきり開く作品が生まれることを願っている。これらの将来につなぐ作品のために第2回目からは、これらの作品の中から何らかの賞を設け、本人を励ます意味で作品と作者を表彰することとなった。また、参加者を広げる意味で、一部、東京精神科病院協会の職員や関係者の作品の展示もすることにした。