東京精神科病院協会(東精協)主催による「心のアート展」は2009年にスタートし、前回からは2年ぶりの開催となるものの本年(2015年)、第5回を迎えることとなった。タイトルは「創る・観る・感じる パッション―受苦・情念との稀有な出逢い―」。
今回も、東精協会員病院等で治療を受けられている方々を中心として制作された絵画や造形など数多くの作品が応募され、一次、二次の審査を経た素晴らしい作品群が東京芸術劇場にて展示される。
この「心のアート展」は、『心の内面が豊かに表現された芸術性の高い作品を展示することで、多くの方に心の問題を理解し感じていただくこと、作品を制作された方々に自信と誇りを持っていただくこと』などが開催の趣旨であるから、単に、心に病を持った方々の絵画や造形などを集めてお披露目するといったものではない。そのことは実際に展示された作品を目にされればお分かりになる筈で、その多くが観る者の心を惹きつける。
さて、その芸術性とは何だろう。広辞苑によれば、芸術とは「一定の材料、技術、身体などを駆使して、観賞的価値を創出する人間の活動およびその所産。絵画・彫刻・工芸・建築・詩・音楽・舞踏などの総称。」とある。すると、観賞的価値を有し、人を惹きつける多くのものが芸術作品ということになるが、そのとらえかたは勿論、人によって違うし、観る側のそれぞれ異なる感性や価値観などによって評価が変わってくるのも当然であろう。今回の審査を担当した私以外の審査員は皆、絵画や造形、美術、芸術等に長年関わってこられた専門家ばかりなので、同じような目線で作品を観ることはできないが、この展覧会活動において私は、精神科医療と芸術とを橋渡しする役割を担っているものと考えている。そういう視点からすると、専門家も、そうでない人も含め、凡人にはない素晴らしい感性で多くの人々を惹きつけるものが、芸術性のある作品ではないかなどと考えている。
今回のアート展では(特集展示)として、高村光太郎の妻・高村智恵子の作品も目にすることができる。心を病んでいた彼女が遺した、素晴らしい「紙絵」作品を併せてお楽しみいただきたい。