これまでの展覧会

特集展示 安彦講平 心のアート展

安彦講平は1936年、岩手県平泉に生まれた。地元の高校を卒業した後、盛岡市の美術学校に通い、その後、早稲田大学で美学美術史を学んだ。在学中には『早稲田大学新聞』の活動に関わり、日米保安や沖縄の基地問題などに強い関心をもった。

1968年、安彦は東京足立病院(東京都足立区)にパートタイムの看護助手のような立場として勤務するようになる。配属された閉鎖病棟の畳の間に小さな卓袱台を据えて、絵に興味がありような人たちに声をかけ、共に手近に在る藁半紙に絵を描きはじめた。これがその後、半世紀以上にわたって続くことになる〈造形教室〉のはじまりであった。

近年では「芸術療法」や「アートセラピー」も普及し、治療やリハビリテーションのプログラムとして採り入れている病院も珍しくない。しかし、安彦が活動をはじめた当時は、こうした言葉さえ一般的ではなく、医療者たちも「そもそも精神病患者にまともな絵など描けるのか」「病状を悪化させることもあり得る」「ただのお遊びではないか」と話し、治療や病棟管理の妨げになることを懸念して、安彦の活動に対しては概して冷淡な態度だった。

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